River Danube in August 20. (8月20日のドナウ川)Part 8
8月20日 (1)
前日散々ワインやビールを飲んだにも関わらず、5時半に起きる。
窓から外をのぞくと昨夜半からふりだした豪雨はやんでいるようだ。さっそくひとりで散歩にでかける。家内は寝床から無言で手を振る。
ホテルの外にでると空気はひんやりと冷たい。これはもう秋の空気だなとつぶやきながらくさり橋の方向へと向かう。
くさり橋は今日も通行止めである。
川岸の道は、昨日は歩行者天国になっていたが、今朝は歩行者も通行止めになっていた、また川岸沿いにそって走っている路面電車の路線も通行止めになっていた。
後からわかったことだが、これはこの日に川岸でおこなわれるイベントの準備のために通行止めにしていたようだ。川岸の道路には数十という単位で簡易トイレが設置されていた。
川岸の通りを散歩することをあきらめ、市中の道を歩いて国会議事堂へと向かう。あちこちに見かける木々の葉は、冬にむけての支度をはじめたかのように、緑からオレンジや黄色にと衣替えを始めている。ポロシャツと短パン姿の私とはまったくミスマッチである。
国会議事堂の近くにくると30人くらいの衛兵が馬に乗って議事堂へと入って行くのがみえた。よくヨーロッパでは馬を見かけるが、30頭あまりの馬が行進していくのは、祝典パレード以外のときにはあまり見ることのない珍しい光景だ。
ヨーロッパの中でもここの国会議事堂は建築物として高く評価されているといわれている。たしかにこの議事堂は大聖堂のような威容を持った建物である。
国会議事堂のまわりには、職員や軍関係、警察関係、諜報機関関係の人、掃除婦などがやたらと忙しそうになにかを準備をしている。その横の公園のベンチではホームレスが寝ている。なんとなく奇妙な光景である。 それにしてもこのホームレスの人々は冬場はどうしているのだろうか。
国会議事堂を通り過ぎて、くさり橋より一つ上流の橋までたどりつく。この橋も通行規制がしかれていて、すべての欄干にはハンガリーの国旗が掲げられていた。
その橋からドナウ川の眺めを堪能する。
ドナウ川越しに見る国会議事堂は朝の新しい光りを浴びて神々しいまでに美しい。朝靄のようにボンヤリとした大気と、艀が通行しない川面が鏡のように議事堂を映す景色のすばらしさは、表現する言葉をみつけるのに苦労する。
すでに散歩をはじめてから1時間近く経過していたため、私は、ここで折り返して議事堂の方へと戻って行った。
国会議事堂ではさらに警備の人間がふえていた。SWATチームの制服を着ている人々までいた。今日はここで記念式典があるのであろう、軍楽隊が国歌や行進曲の練習をしているのが聞こえてくる。
ボディチェック用の機械も設置されている。なんとなくものものしい雰囲気がこちらにも伝わる。
ちなみに、国会議事堂の地下を通っている地下鉄M2号線は、昨日から閉鎖されている。テロ対策は万全のようだ。
ふと、横づけされている5台の観光バスが目に入る。スーツケースなどを収容する所が空いていたので、何気なくのぞくとそこには数十丁の軍用ライフルがずらりと入っていた。おもむろに写真をとろうとすると、視線のするどいにいさんがかけよってきて、ニッコリ笑いながら「Nem!」(英語でいうNO)という。そりゃそうだ。軍関係の物資を写真にとらせる親切な軍隊なんて世界中どこ探したってあるわけがない。デジカメを没収されてもかなわないのでスゴスゴと引き返すことにする。
結局、朝の散歩は1時間半におよんだ。
ホテルにもどる頃には太腿も多少疲れている。でもこのくらいのハンデがあって、ちょうど家内といっしょに歩けるというものだ。
毎日1時間以上徒歩している人間と一日300歩も歩かない人間がいっしょに行動をともにするのであれば、このくらいのハンデがあって当然だろう。
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