【最終回】遥かなるトスカーナ、静かなるコートダジュール
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コートダジュール・トスカーナ
コートダジュールの空気を胸いっぱいに吸いこんだところで、駐車場に向かう。トランクに三本のロゼワインを積み込んでバルセロナへと出発する。旅ももうすぐ終わりだ。
サントロペから高速道路に向かう道の途中で大きなガーデニング店を左手に見つける。特に買い物をしたいものがあるわけでもないのだが、なにかに引き寄せられたように我々は車を店の駐車場にすべりこませた。
店の中は世界共通の草花のフレッシュな香りで満ちている。数年前、千葉に住んでいた時にハーブに凝ってよく園芸店に足を運んだものだが、草花の香りがそんな記憶を呼び覚ます。
ハーブのコーナーにいくとラベンダーの鉢がたくさん並んでいる。早咲種のラベンダーはすでに赤紫色の花をつけている。そのまわりを春一番の仕事をするかのように忙しく蜂が飛び回っている。
我々はなるべくまだつぼみの状態の鉢を選んで、蜂が葉の間に隠れていないのを慎重に確認してレジに持っていく。
店をでると、今来た道は車で込み合いだしている。彼らはこれから白いヨットと青い海を楽しみにいくのだろう。
ラベンダーの鉢をトランクにいれるのはなんとなくしのびないので、後部座席に静かにおいた。
このラベンダーが咲くころにまたここへ訪れることを考えながら、私はイグニッションキーをまわした。
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